インターネットの国境
従来、インターネットは自由な社会、国境のない社会と言われてきたように思う。あるとしても言葉の壁であって、アクセスはできる、というのがよくある話だった。
そしてそれは、今までは感覚的にもそんなものだったんじゃないだろうか。99年くらいの地球病とかそういう話はあったにせよ、比較的どこにでもアクセスできたし、どこからでもアクセスはあったんじゃないか。
だが、最近はインターネットにも国境が生まれつつある。
特にコンテンツ系のサービスに著しい。
最近、欧米ではテレビ局をはじめとするコンテンツプロバイダがインターネット上でのコンテンツ配信サービスを広く行い始めている。ABCやFOXなどがテレビドラマを翌日からストリーミング配信や、iTunes Store等での配信を行っているのは結構有名な話だ。
ただ、これらのサービスは、全てアメリカ国内からでないとアクセスできない。IPで判別を行い、アメリカだけで行っているわけだ。iTunes Store等も、各国でアカウントをとらないと、各国毎のサービスは受けられない。
これはアメリカだけではない。イギリスでもChannel4やBBCがUK Onlyのサービスを展開している。その他の国でも次々と進んでいる。
そう、IPを利用した国境は次々とインターネット上にも建設されつつある。
この流れは、今後も止まらないのではないだろうか。今でこそ、コンテンツ配信サービスでのみこの流れは顕著だが、各国の文化の違いから、その他の分野でこの動きが進むこともあるのではないかと思う。
そしてこれはインターネットのIPv6化や、NGN化によって加速される可能性もある。今のIPv4の無秩序な部分が新たなネットワークによって整理され、国毎の判別をしやすくする可能性があるからだ。
私は別に国境ができることを悪いと言っているわけではない。
ただ、国毎の違いを乗り越えて、コンセンサスを作り、技術を開発していくのがインターネットであったような気がして、それが失われるのであれば、それは悲しいことだと思う。
これからのインターネットがどのようになるのかはわからないけれど、願わくば、中国のグレートファイアーウォールのように、各国内で情報すらも制限されることが無い社会で、インターネットはあって欲しい。
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