クリエイティブ・コモンズの著作者人格権
レッシグ教授のBLOGに著作者人格権についての話が出ている。
「moral rightsの議論について」 (原文:on the challenge of moral rights)
クリエイティブ・コモンズでは著作者人格権の問題に関与してないけど、それは著作者人格権の問題を無視しているわけではない。そこが気になるなら使わなければいいじゃないかというのは、まあ当然の話かなと。別に強制的につかえという代物じゃないし、著作者人格権を保護したままで許諾を行いたいのであれば、そういうシステムを自分で作ればいいのだと思う。
……できあがったもののチェックが必要というのは、ライセンスとは違うような気もするけど。
ただ、この編集部注がちょっと気になった。日本版では一応著作者人格権に対する配慮が行われている。一条の定義にある、二次的著作物に関する規定だ。(by-sa、by-nc-sa、by-nc等を参照)
第一条 (by-ncより)
a. (略)……また、原著作者及び実演家の名誉又は声望を害する方法で原著作物を改作、変形もしくは翻案して生じる著作物は、この利用許諾の目的においては、二次的著作物に含まれない。
また、もう一つ配慮している点として、帰属要素の制限事項がある。
第五条 (by-ncより)
j. もし、あなたが、本作品の二次的著作物、又は本作品もしくはその二次的著作物を組み込んだ編集著作物等を創作した場合、あなたは、許諾者からの通知があれば、実行可能な範囲で、要求に応じて、二次的著作物又は編集著作物等から、許諾者又は原著作者への言及をすべて除去しなければならない。
これらによって、名誉を侵害するような形への改変を防ぎ、望まない形に改変された場合に氏名表示を拒否することが可能になっている。
また、日本版では選択の際に帰属要素がとりはずし不可能になっているのも、著作者人格権への配慮と言っていいと思う。
確かにライセンスを発行する際に、著作者人格権の行使をしないと宣言することを条件にしているが、著作者人格権の一部がライセンスに組み込まれることで、それなりに保護とのバランスをとっていると思う。それでも不満があったら、使わなければいいだけだし。(著作者人格権の不行使特約については小倉弁護士、町村教授らが発言している。)
なので、編集部注が一部だけとりあげているのは、ちょっとどうかなと気になった。
ちなみに、この注を書いた人が二次的著作物の条項に気づかなかったのは、帰属ライセンスを見たせいだと思われる。実はこの帰属ライセンス、一条a項が誤って抜けているというミスがあったりするのだ。
CCJPは2.1を作って差し替えるとしてすでにorg側に伝えているはずだけど、まだorg側が対応していないのだろうか。放置しておくのはまずいと思うんだが。
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nd系でも二次的著作物の定義が同じ(名誉又は声望を害する…二次的著作物に含まれない)で、deedやrdfで明示的に禁止されているderivative worksの定義はそのlegal codeに拠るとすると、名誉声望を害する二次著作物なら明示的には禁止されていない?
明示的に禁止していなくても許すと書いていない以上著作権法デフォルトが適用されて結局は禁止されていることになり結果は同じとしても、定義そのもの以外で使われていない言葉がわざわざ定義されているのは、プログラマ的にはバグの温床になるコード使い回し的な香りが。deedやrdfで使われる語の定義としては名誉声望の件を残す意味はないし。
Posted by: トラバ経由 | 2005.03.07 01:11 AM
コメントありがとうございます。
基本的には著作権法で許可されていないし、禁止になるというのが本来の意図だと思います。>名誉声望を害する二次的著作
許諾、制限の両方の条項ともに二次的著作という表現を使用していないので、そこで混乱が起こるというのはあまり無いかな、と思っています。制限として二次的著作禁止とか書かれていると、混乱が巻き起こりますが。
RDFについても、ndの場合はDerivativeWorksの要素は使用されてないので、同様に混乱はそう無いかなと。
ただ、使われてない定義がライセンス文に入っているというのが誤解を生むかもしれない、というのはありそうですね……。
これについてはCC-JPにメール投げておきます。
Posted by: kira | 2005.03.09 11:38 AM