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ネットワークには固有の法律があるのではないか。HOTWIREDの連載をもとに加筆・編集された本。現在一番のお薦め。(記事)

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2003.12.16

レコード輸入権 1

文化審議会著作権分科会が報告書(案)に対する意見を募集しているとのことで、色々と議論が起こっている。
焦点となっているのは、書籍に対する貸与権の付与についての問題と、輸入権の創設についての問題のようだ。特に輸入権に関する意見が多く見られている。ネットでは反対の論調、リアルメディアでは賛成の論調が多い(・・・とまではいえないか?)かな。

私はARTSの掲示板に出入りしている(最近は閲覧のみ)のだが、そこに笹山氏の論考が出ていた。「ファースト・セール・ドクトリンの明確な位置づけなくして、レコード輸入権の創設なし」というものだ。
ファーストセールドクトリンに視点を当てた独特なものなのだが、ちょっときになった点がある。それはアメリカの輸入権がファーストセールドクトリンに劣後すると言い切っていいのだろうかという点だ。
アメリカのQuality King v. L'anza訴訟(以降QL訴訟)でファーストセールドクトリンが認められたというのは輸入とはまた別の視点なのだが。
確かにQL訴訟では602(a)条がファーストセールドクトリンによって消尽しているが、これはこの事件の品物がアメリカで作られた後海外に輸出され、そしてそのままアメリカ国内に戻ってきたという品物であるためだ。つまり生産地がアメリカであるために、109(a)条にひっかかるとされたことになる。
そしてこの109(a)条は、アメリカ国内で適法に複製されたものについてのみ適用されると判断されている。(国内消尽有り&国際消尽無し)
ということは、現在争点となっている輸入権の対象である、海外で適法に複製されたCDについては、109(a)条は及ばない。こういう形の並行輸入は輸入権に引っかかるため違法になる。(上記QL訴訟ページ最下部に表有り)

多分このような状況から、文化庁の報告書ではアメリカにも輸入権に似た制度があるとされているのだと思うのだが・・・?

ついでに日本の事情も書いておこう。
日本の譲渡権については国際消尽すると明記されているため現在のところ輸入権の適用はない。
ただし映画の著作物にのみ適用される頒布権については少々複雑な事情が存在する。まず先行する判例として101匹ワンチャン事件(東京地裁平成6年7月1日)があり、これは、映画の頒布権については国際消尽しないと判断されたものと解されている。これゆえに、映画の著作物に限っては輸入権があると同様の状況にあると解されていたが、これは現在微妙だ。
というのも中古ゲーム裁判では映画の著作物の内、大量頒布する著作物について、頒布権の譲渡についての部分は第一譲渡で消尽するとされた。101匹ワンチャン事件では頒布権は国内消尽されないのだから国際消尽もされないだろうという感じで判決が出ているので、第一譲渡で譲渡の部分が消尽するとすれば、国際消尽も危ういかもしれないからだ。譲渡権については国際消尽が認められているだけに、余計にあり得る。
そういえばこの点についての論考はまだ見た覚えがない。既に出ていたら情報求む。
(私の解釈ミスの可能性有り。&こんな複雑な状況にするくらいなら、私の意見(映画の著作物を、一つの複製物をもって多数の人間に視聴させることを目的としたもののみとする)の方が使えるはずだと言ってみたりする。でもこの意見もどこかにあるかもな。)

まあともかく。とりあえず現在の日本のCDには輸入権はない。(CDは譲渡権の対象なので)
ただし、113条1項1号で、国内で為されたならば不法になるような形で、海外で作られた著作物を輸入する行為については、違法とされている。つまりは、海賊版の輸入禁止だ。これについて、海外販売禁止を明記した海外産CDであればこの条項で防げるのではないかという論点もあったと思う。説が分かれていたかな?ここはあまりおさえてない。

日本の輸入権論議で一番注目しなければいけないのは、再販制度との関係だろう。これについてはどの人も注目しているようだから今更私が言うまでもないことかもしれない。

とりあえず、輸入権と再販制度の話をわけるのは止めて欲しいところだ。著作権分科会でもセットにして話をするべきだろう。でなければ、再販制度について考慮する、という意見つきで輸入権(別に契約違反CD輸入禁止条項だろうと内容は変わらない)を認め、その後に考慮してみたけどやっぱり再販制は必要だよね、と言って再販制度もそのまま認められるというようになりかねない。


輸入権について多くを書くのは明後日以降に回す予定。というのも、輸入権に関する勉強会に参加させていただけることになったためだ。そっちで色々と話を聞かせていただいた上で、少し書くかもしれない。時間がなければ無理だが。(まあ私が2を書くのを求めている人もいないだろうし)

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コメント

ARTSの掲示板でのレスが送れて申し訳ありません。
Quality King v. L'anza Research 訴訟で「海外でライセンス生産されている複製品」についての、ファーストセールドクトリンと輸入権との関係ですが、
ここで、一度、日本の著作権者の手を離れて、海外を経て、日本に逆輸入レコードが出回るルートを一つ一つ検証していきましょう。
まず、日本の著作権者は、ライセンサーとして、ライセンシーとなる日本のCD制作・製作会社と適法に著作権利用ライセンス契約を結びます。
日本のCD制作・製作会社は、ライセンサーとして、ライセンシーとなる海外のCD製作会社と、適法に、原盤の複製・頒布についての原盤使用ライセンス契約を結びます。
海外のCD製作会社は、作ったCDを、その国の卸・小売にまわします。
そのいずれかの段階で、その国の輸出業者にCDが横流しされます。
そのCDが、日本の輸入業者に適法に輸入され、日本国内のディスカウンター・ワゴンセール・ネット販売などを経て、日本国内に適法に出回ります。
本間忠良さんの解釈によれば、Quality King v. L'anza Research 訴訟において、「海外でライセンス生産された複製物」は、「本法のもとで、適法に作成された複製物」ではないということで、では、「米国法上違法な複製物」と、直ちに言い切れるか?といえば、そう断定することは不可能であり、「海外においてライセンス生産された複製物」は、「本法のもとで、適法に作成された複製物」と見るべきであり、それは「本法に違反することなく、作成された複製物」と解釈すべきである、したがって、ファーストセールドクトリンは、適用しうる、とhttp://tadhomma.infoseek.livedoor.net/AnarchoMusic.htm
の46.3.で述べられていますね。
まあ、Quality King側は、「109(a)条が602条に優先するんだったら、602条は、海賊盤規制以外、何の意味もないじゃないか」と主張したのに対して、裁判官は、その論理を逆にとらえて、「逆に602条が109(a)条やフェアユース規定に優先するんだったら、109(a)条やフェアユース規定は、何の意味もないじゃないか。109(a)条と602条との関係は、そのような部分的なとらえ方をするでなく、総合的にとらえ、解釈すべきものである。」と逆襲した形となっているんですが。
物流の上では、国内生産と海外生産の違いはあるのですが、ライセンス契約上では、日本国内で、ファーストセールが行われているという点では、変わりないということになりますね。

投稿者: (Dec 21, 2003 1:50:44 PM)

コメントありがとうございます。
このように考えると、国際消尽をすることになりますね。しかしそれだと輸入権が存在するという文化庁の資料に問題があることにもなります。
まあ輸入権は確かに条文として存在するから間違いとまでは言えないのかもしれませんが。

しかし、私にはこの判決、両方に対していいようにみせているのではないかという気もします。つまり、レコード会社側には、海外で作ればOKだよという風に見せ、消費者にはファーストセールドクトリンに従うんだよ、というように。
結局、この事例ぴったりのが出てくるまで、はっきりとはわかんないということなんでしょうね・・・。

投稿者: kira (Dec 21, 2003 8:52:40 PM)

ARTSの掲示板では触れたんですが、http://www.law.cornell.edu/copyright/cases/523_US_135.htm
では、「602条(a)が107条から120条までの各条項に従わないで、独立して機能するのなら、フェアユース条項を含むこれらの107条から120条の条文は、意味を成さないことになる。」として、輸入権条項だけ独立して機能しているわけではないということを強調しています。
602(a)は、むしろ、海賊版輸入規制中心と見たほうがよいでしょう。
文化庁の資料http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03092501/003/007.htm
には、表の下の目立たないところに、「本表では、「支分権としての輸入権」と「海外で適法に作成されたレコードの輸入行為を違法とみなす法制度」を共に「輸入権」として整理している。」などと書いてあり、余計まぎらわしくなっていますね。
こんなところにも、正規の逆輸入盤問題と、海賊盤輸入問題とを、こんがらせて、世論がとらえてしまう原因があるような気がします。
なお、前回コメント中、「まあ、Quality King側は」とあるのは、「まあ、L'anza Research 側は」の間違いでした。

投稿者: 笹山登生 (Dec 21, 2003 10:38:15 PM)

> 「本表では、「支分権としての輸入権」と「海外で適法に
> 作成されたレコードの輸入行為を違法とみなす法制度」を共
> に「輸入権」として整理している。」

あ、ここまでは気をつけていませんでした。
支分権としての輸入権にはあたるということですか・・・。なんて面倒な記述を。
おかしな点として意見だけしてみるのも手かもしれませんが、わかっていてやっているんでしょうね・・・。

そしてこういう流れの中で、きっと洋盤についての議論は忘れ去られていくのでしょう。さすがにそれは困るので、意見しておかないといけないですね。
(基本的に洋楽とクラシック(洋盤)しか聞かないので、輸入権が洋盤まで規制始めると十分に困ります・・・)

投稿者: kira (Dec 21, 2003 11:38:58 PM)

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